2012年07月29日
本音と建て前
ロンドン五輪が開幕した。28日の中継を見た感想はいいニュースが6割、そうでないニュースが4割といった所だった。いいニュースはもちろんNHKのストリーム中継だ。バドミントンのスエマエの試合やハンドボールの予選、肝心のテニスもライブで見る事ができた。P2Pに繋がなくても十分高画質である。余計な日本語の実況と解説がないのが一番いい。まさにテレビの中継がビギナー向けで、ネットは上級者向けと完全に差別化されているのが今の状況をハッキリ示していて面白い。テレビから締め出されているのは変わらないが、だからといって無理にテレビに迎合しなくてもいいんじゃないか、とも思った。テレビとは違う選択肢がネットにあるなら、それもいい。どちらが好みかは見る人次第だろう。
さてバッドニュースにも触れなければならない。テニスの試合を見てすぐに気付いたのは、やはりオリンピックはエキシビションだという事だ。フェデラーを始めとするスタープレイヤーがたくさん出ていても、普段のツアーレベルの緊張感がない。特に負けた選手に共通して感じたのは、やけにいさぎが良いことだ。1セット目を失い、2セット目も相手にリードをされて負けが見えてくると、そこから挽回しようとする感じがない。是が非でも勝とうとする姿勢がいつもより希薄なのだ。確かにここで勝ってもポイントはつくが、実利(賞金)はない。どんなに立派な理由づけをしても、プロ選手の彼らにしてみれば結局タダ働きなのである。現在でも十分リッチでフェイマスなのに今更どうして、と思うのも無理はない。いくら国の代表で出場しても、予選もない五輪に大した思い入れもない選手も居るだろうし、モチベーションが低いのも良く分かる。頭では分かっているつもりでも、こういう所にプロとしての本音が見えてしまう。やはりメダルだけではなく、他のアメが必要なのだ。
とはいえ、ワンウイークの間テニスの大会が見られるなら損はしない。モチベーションが低い中どうプレイするのか、別の意味で楽しみだ。余計な事だが、ハク付けの金メダル獲得よりUSオープンシリーズにでも出た方がプロテニスプレイヤーの本分に叶うと思うのは私だけだろうか。それに本気の勝負が見られないなら、金で薄汚れたオリンピックにテニスは必要ないだろう。
2012年07月24日
ビバ・ライブストリーム
今日発売のテレビガイド誌で五輪のライブストリーム中継の内容を初めて知った。おそらく期待はずれのテレビ放映分の再配信だと思っていたのに、いい意味で裏切られた。うれしい事に、今まではテレビで放送されなかった競技がたっぷり見られるらしい。テニスは1回戦から、バドミントンやハンドボールも予選リーグから見られるとなると、過去のつまらない五輪とは意気込みが違う。本音はテレビで見たいのだが、やはりスポーツはライブで見るのが一番だ。しかもうるさい日本語の実況と解説がないらしいので、多分会場音だけかあっても英語の音声だろう。何か遠まわしの差別をされているような感じもするが、前回までの全く見られない状況に比べればずっとマシである。日本人選手だけではなく、期待のフェデラーやジョコビッチの試合も見られるならテニスファンも文句ないだろう。NHKだから面倒なアド(広告)も出ないだろうし、いろいろと制約の多いテレビよりもベターなのかも知れない。ようやくテニスファンも楽しめそうなオリンピックになりそうだ。
選択肢は多いほうがいい。いつまでもテレビがカバーしない所をネットでストリーミング配信するのは時代の流れで当然だろう。当たり前と思われていた常識が覆されるかもしれない。五輪配信でネットがテレビにアップセットするのだ。日本のテレビが勝手に選んだ退屈な競技と、そのテレビからこれまで不当な扱いを受け続けてきたテニスやハンドボールなどの競技のどちらがメジャーなのかがハッキリする16日間(テニスは9日間)が今から待ち遠しい。また寝不足の幸せな日々になるのだろう。
2012年07月23日
ニュー・ラジオ・デイズ
日曜の晩はAMラジオがいい。TBSの「スローリビング」や文化放送の「天たま」は欠かさず聴いている。ラジオを全く聴かない人も今は多いらしいが、勿体無い話だと個人的には思っている。ラジオは年寄り向けの時代遅れのメディアと見くびってはいけない。その影響力は現在でも相当なものだ。どんなに安いラジオでもNHKの2波とキー局(TBS、文化、ニッポン)の3波ぐらいは入るし、何よりタダである。電源もポケットラジオなら乾電池数本だけで済む。それでも新聞などの活字メディアよりずっと情報量は多い。デジタルの「ラジコ」や「らじるらじる」ならパソコンやスマホでも聴けて音質も抜群である。
もちろん放送である以上、その特性を最も活かせるのは生放送(特にスポーツ)なのは変わらない。今度のオリンピックも要チェックの競技はレコーダーで予約しておいて、ラジオで聴いてみるのも面白い。競技は限られるが他のことをしながら、あるいは寝ながらでも五輪がライブで楽しめるのだからコストパフォーマンスも高く、それでいてたいへん便利なメディアではないか。普段のラジオが過小評価されるのは、古臭いどマイナー球技ばかりでJリーグなどの他のスポーツ中継が少なすぎるからだ。
ラジオでスポーツ中継が沢山あるのは正月休みとオリンピックの時だけなのが惜しい。タダのスポーツ専門のラジオ局ができないだろうか。サッカーの英プレミアリーグのライブ中継やテニスの4大大会の速報を流す局があってもいいだろう。そうした局が未だに無いのがスポーツ中継は二流国の表れなのだ。余談だが、日本製ラジオのデザインが気に入らない時は中国や台湾製の輸入業者のサイトを探すといい。すこし値は張るが性能、デザイン共に文句なしのものがいっぱいある。今のラジオはチープな物ばかり、とは限らないのだ。
2012年07月20日
陰謀渦巻くテレビジョン
NHKのロンドン五輪放送予定をホームページで見た。大方の予想どおりテニスに関してはひどい扱いである。まずライブと地上波の放送は全く無いようだ。(男子決勝のみ総合でも放送予定あり)シングルスはBS1で30日に1回戦、8月の1日に2回戦、2日に3回戦、4日に男女準決勝、5日に女子決勝、6日に男子決勝とあるが、いずれも録画のハイライトだろう。錦織ほかの日本勢の活躍があればいくらかは変わる可能性もあるだろうが、ここ2大会と大して変わらないスタンスで、メダルは期待薄なのがありありだ。仮に錦織が決勝に進出してもライブで放送しないのだろうか?そんなテレビ局は即、免許取り消しだ。
(開会式が終わった直後の)28日の1回戦から8月2日のQFまでは19時30分から、3日のSFからは20時からの(正に)ゴールデンタイムに試合があるというのにライブ中継しないNHKには失望の2文字しかない。同じウインブルドンでの大会なのにこの温度差は一体どこから来るのだろう。勿論テニスだけではなく、ハンドボールやバドミントンだってサッカーと同じ様にライブで長時間見てみたい。そう思う人がたくさんいるのだ。便利なマルチ放送はこういう時の為にあるのではないか。民放キー局各チャンネルで1つづつサブチャンネルを増やしても最低5種目余計に放送できる。BSも含めれば10種目だ。出来ないのではなくやらない、やりたくないのが現実、それがこの国のテレビの驚くほど低レベルな限界だろう。
大会の主旨が変わってもオリンピックを見たいのは誰もが同じなのに、競技によって取り上げ方に明確な差があるのはテレビ側の完全な陰謀だ。この状況を絶対に認めてはならない。テニスファンがテニスを見たいのは当然で、この国のテレビが全くもっておかしいのだ。
日本のテレビが役に立たないなら選択はやはりアレしかない。たしかユーロスポーツも五輪中継をやるはずだ。(自分勝手な予想をすれば)フェデラーが金メダリストになる瞬間を見るには不本意だがそれしかなさそうである。
2012年07月19日
二流国の証
昼から錦織の試合を見た。2セット目のマッチポイントを取り損ね3セットまでもつれたがなんとか勝った。問題はこういった小さな大会を日本のテレビが大してフォローしない事だ。なぜだか分かるだろうか。あまり見る頻度を増やすとテニス人気が定着するからだ。それまで「どうでもいいスポーツ」だったものが「絶対マストのスポーツ」に変わるのである。それがペイチャンネルならまだいいが、もしタダのテレビで俄かテニスファンが急増したら一大事だ。ほとんどの素材(番組)を欧米から買うはめになったら、日本の安い学生スポーツなどでごまかしているテレビ局はお手上げだろう。沢山あるテレビガイド誌がこぞって「今月要チェックのテニス大会を総力特集!」などの記事を組み、しまいには正月休みに「箱根駅伝より(ATP)カタールオープンとか(ITF)ホップマン杯がライブで見たいよねー。」なんて事になったら非常に面白い事態ではあるが。多分、そうしたくない意図があって地上波がテニスを取り上げないのだろう。ただ、1年は52週あり、シーズンオフの12月の4週を除いて48週、それから4大大会の8週を引いても残り40週はあるのにそのうちの何週ぐらいが見られるのだろうか。テニスがこの国でメジャースポーツになるには、もっとたくさんの試合がテレビで見られるようにならないとダメだ。パソコンでのストリーム中継はテレビでは見られない状況での最後の手段であって、それが本意ではない。面倒なアド(広告)を消したり、しょっちゅう画面が止まるのはもううんざりだ。アメリカの「ザ・テニスチャンネル」みたいなテニスファンの為だけのプログラムがとても見たい。
もう万人向けのスポーツなんて要らない時代なのに、いつまでもそんなものにしがみ付いている日本のテレビが大バカに思える。それでも彼らがあのマイナー球技の放送を止めないのは、自分たちがさんざん重要視してきたものが全否定されるのを恐れているからだ。「世界でも稀にみるマイナー球技」を長年崇め奉ってきたのだから仕方がないだろう。しかし、自分達の間違いに気付いたのなら即刻改めるべきだ。日本人の活躍でしかスポーツを見ないのはもはや時代遅れで非常につまらない事だと今の状況がハッキリと証明している。きっと現在のテレビの編成担当者も子供の頃からつまらないスポーツばかり見て育ったのだろう。その悪い習慣のおかげですぐには自分のスポーツ観は変えられないのだ。
とかくトレンドを創ったりするのは得意な日本人も、ことスポーツ中継に関しては全然ダメである。スポーツ(とりわけテニス)が「かけがえのない素晴らしいもの」になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
2012年07月16日
腐ったオリンピック
日本人は4年に1度のオリンピックが好きらしいが、私はひどく懐疑的である。それと言うのも五輪を続けている理由が莫大な放映権料(つまり金儲け)の為だからだ。76年のモントリオールで初めて収支が赤字になり、80年のモスクワでは西側のボイコットに揺れた五輪は存続のためにスポンサー制度を84年のロサンゼルスから導入した。これで赤字になる心配は一応は解消した。次のてこ入れはプロ選手参加の容認だった。競技レベルを上げるため、なんてわざとらしい言い分けをしたが本音は有名な選手に出場してもらい、大会のPRと放映権のセール拡大と放映権料の吊り上げの3つを狙ったのは見え見えである。これにより、「アマチュア精神の尊重」とか「参加する事に意義がある」といった五輪本来の目的は事実上無くなった。やはり始めてから100年も経過するといろいろな意味で中身が変容するのだろう。企業スポンサーが付いて、プロ選手が出たら普通の大会となんら変わらない。参加する国の数がやたら多いだけである。日本人が好きな?マイナー球技2つが正式種目から外されたのも放映権が売れないせいだし、代わりに人気のあるゴルフを入れたのも放映権が売れそうだから、が理由だろう。もちろんテニスが種目に入っているのも面倒な予選が無いのも、みんなフェデラーやジョコビッチなどのスター選手に出てもらい、シケた五輪の話題づくりと(最終的には)たくさんの放映権料を稼いでもらうためだ。
たかが2週間強のオリンピック1大会につき10億ドル(以前は約1000億円、現在は約800億円)以上も支払う(アメリカのNBCみたいな)マヌケなテレビ局の気が知れない。テニスの4大大会のほうがよっぽどマシではないか。
もうお金の絡まないスポーツ大会など皆無だ。「オリンピックは特別な大会。」などと言う選手がいるが、自分のアイデンティティ(存在理由)を誇示したいだけだろう。どこかの知事さんが五輪を招致するのに躍起になっているのが心配だ。すでに300億円もムダにしたのに、また150億円もドブに捨てるのだろうか。もはや金儲けの事だけしか考えていないダメダメなIOC(国際オリンピック委員会)に払う必要など1円もないだろう。
2012年07月14日
タダテレビの大罪
暑くて憂鬱なシーズンの始まりである。プロだけでは飽き足らず、わざわざ高校生の地方大会を含めて連日朝から晩まで(オリンピックにも無いような)どマイナー球技をタダのテレビで延々垂れ流すのだから、嫌いな人には大迷惑だ。なぜ日本のテレビがこんな事をするのか、と言えば自分達のつまらないスポーツ観を半ば強引に押し付けるためだ。まじめにやっているのが発祥国のアメリカとこの国ぐらいのどマイナー球技をメジャー球技に見せかける為の洗脳といっていい。だから、極力見ない。この国ではマイナー球技扱いのテニスやバドミントン、ハンドボールなどの面白いスポーツが幾らでもあるのに、それにすら気付かないように(周到に)マインド・コントロールされてしまうからだ。個人のスポーツの好き嫌いをテレビ側が勝手に決めようとするのだから、相当ふざけた話である。彼らが勝手に決めた優先順位のスポーツしか見せないのは傲慢以外の何ものでもない。おかしなシステムにはそれがマトモになるまでクレームし続けるのが大切だ。前にも取り上げたマルチ放送ですら未だにキー局では実現していない。(NHK以外で実施したのはMXやテレ玉などの元U局だけである。)
タダよりコワイものはない。知らず知らずの内に貴方のスポーツ観(だけとは限らず自身の価値観にまで)多大の影響を受けているのだ。結果を出さないと何も認めて貰えない「効力主義」というのもその1つだろう。スポーツを始めた理由はそれぞれなのにも関わらず、いつの間にか目標が金メダルを取る事だけにすり替わってしまう。長い競技生活のうちのほんの一瞬でしかないオリンピックでの活躍しか頭にないとしたら、(または)それ自体が本意でないとしたら、本当にその選手にとって幸せな事なのか、といつも思ってしまう。(暗にそれを強いる日本のテレビのエゴにもうんざりだ。)五輪をステップにしてマイナースポーツをメジャーにしたい気持は分かるが、それは競技団体の都合であって個々の選手には関係ない事だ。
スポーツ中継を見るのは本来楽しい事なのに、テレビ側の勝手な思い込みのおかげで大抵はつまらなくなってしまう。もう少ししたら地上波のスポーツ中継なんて誰からも相手にされなくなってしまうのではないか。余計な事はしないでシンプルにスポーツの面白さを伝えるのが、この国のタダテレビにできる唯一の贖罪だろう。まあ、それができればこんな事も書かないで済むはずなんだけど。
2012年07月13日
キロクヨク
人間には食欲や睡眠欲といった本能的欲求に近い「記録欲」があると思う。「大事なものを自分や他人の為に残したい欲求」である。人類の創世記から、ありとあらゆる媒体での記録が容易になった現在でもそれは変わらない。ウインブルドンのオフィシャルフィルムを毎年つくるのはその為で、マレーが74年ぶりに決勝に出た事をちゃんと記録しておくのだ。そして、それは個人でも驚くほどカンタンに出来る。配信サービスなんて便利なものもあるが、自分の大事な記憶の整理は自分自身でするものだ。他人任せではいけない。
昨日ブルーレイレコーダーを買った。チューナーが1コだと何かと不便なのでダブルの1番安いのを選んだがやっぱり新品はいい。VHSビデオの頃には難しかった長時間録画と大量保存を一気にクリアしたこのニューマシーンでエアチェックすべき対象は何か?それはもちろんテニス中継である。これほどピッタリのセッティングも他にないだろう。先日終了したウインブルドンも1日に約9~11時間ぐらいは中継できるのだから、まずハードディスクでないとフォローできない。テニスファンにはマストなアイテムともいえそうだ。
そう考えてみればテニスは時間がかかるスポーツだ。1セットがタイブレークまでいくと約1時間かかり、仮に3セットなら3時間近くかかる計算になる。それが何試合もあるのだから日本のテレビにテニスが嫌われ、サッカーばかりになるのが分かる気がする。しかし、それは時間枠やお金のことしか考えないこの国のテレビの浅はかさで、テニス程テレビ向きのスポーツはないと思う。テレビカメラで全景を捉える事さえ大変なサッカーのフィールドに比べればテニスコート1面なんて狭いものだし、各ホールごとにカメラが要るゴルフよりずっと中継しやすい。寒い季節にはインドアの試合もできるし、ちょっとばかり金はかかるがチャレンジシステムはスリリングで面白い。それに4大大会のメインコートなら複数のカメラで2、3時間は試合をライブ中継するのだから、マイナーな選手からすれば文字通り(演劇の)スター扱いである。シャラポワの様にルックスがある女子選手がアピールする場としても最高だろう。何よりテニス会場の雰囲気がいい。サポーターどうしが(時には)トラブルになるサッカーに比べても、とてもナイスな人達に思える。こう見ただけでもテニスが魅力十分のスポーツなのに、わざわざ見る機会を少なくしたのが理解に苦しむ。今からでも遅くない。テニスを再評価して少なくともメジャー大会とツアーファイナルのセミとファイナルぐらいはタダで放送すべきだろう。
ようやくテニス中継をマトモにフォローできるハードができたというのに、肝心の番組がないのがなんとも寂しい。ああ、そういえばビーキャスカードにはWOWOWとスカパーe2の無料体験が付いていたっけ。早速全米とATPツアー
ファイナルを見てみよう。パソコンのシケた画面よりはずっとマシなはずだ。
2012年07月09日
運命のいたずら
ウインブルドンが終わった。シングルスの女子はセリーナ、男子はフェデラーという大本命が優勝するいつもらしい幕切れだった。ラドバンスカもマレーもこの恐るべき優勝常連者たちにアップセットすべく頑張ったのだが、そうはならなかった。勝負強いシャラポワやクビトバのように最初の決勝でタイトルを獲れる場合もあるが、大抵は時間がかかるのが普通だ。93年の決勝でグラフに負けたノボトナが実際にタイトルを獲得したのは5年後の98年だし、92年にアガシに敗れたイバニセビッチがワイルドカードをもらって(通算4回目の決勝で)やっと優勝したのは9年後の01年である。いかにここで勝つのが大変かが伺えるエピソードだろう。だからマレーもラドバンスカも諦めないで欲しい。今回決勝まで進出したのは(決してまぐれなどではなく)優勝するチャンスが十分にあるという事だ。まあ、現在トップ5にいる2人がこれが最初で最後の決勝、などとは全く思っていないだろう。(特に)近い将来マレーには「この敗戦があったから優勝できた。」とインタビューに答えて貰いたい。きっと違う意味の涙が出るはずだ。
ただ、(マレーのファンには悪いが)決勝の相手がマレーになった時フェデラーは(内心で)優勝を確信したに違いない。3年前とほぼ同じシチュエーションだったからだ。あの時も苦手のナダルは欠場し、決勝で相性のいいロディックに5セットまで追い詰められはしたが、結局優勝できた。そして今年も。あのマリッセ戦での腰痛というアクシデントがあったせいで、フェデラーが(多分、試合を長びかせたくない一心で)自分の1番いいプレイを引き出したのはなんとアイロニー(皮肉)で運命的な出来事ではないか。そう、(まるで神風の様に)こんな絶好のタイミングで再度追い風が吹いたのだ。その勢いのままナンバー1のジョコビッチを破り、優勝にまでたどり着いた。この一連のプロセスを見る限り、やはり彼がナンバー1にふさわしいのかも知れない。それは、今回でサンプラスの優勝記録に並んだフェデラー自身はもちろん、きっと全世界のテニスファンとテニス界全体にとっても幸せな事なのだろう。
2012年07月07日
ビューティフル・サンデー
フェデラーとマレーが決勝に進出した。2人共セミファイナルは会心の試合内容で、まさに誰もが待ち望んだドリーム・ファイナルの実現だ。こうなったのもナダルが2回戦で負けたからである。もう正直「ナダル対ジョコビッチ」の決勝には飽きたところだったのでタイムリーなカードだろう。ちょうど2009年の状況に似ている。あの時の「フェデラー対ロディック」も名勝負だったが、今度もそうなることを望みたい。どちらが勝ってもハッピーエンドに違いない。ナダルファンには申し訳ないが、ナダルがいない時の方が明らかに雰囲気が盛り上がる気がする。ナダルには4大大会は適当に休んでもらうのがベターらしい。
それにしても今大会は雨の影響が大きかった。センターコートには屋根が付いたが、その他のコートは以前と変わりない。せめてナンバー1コートにも簡易型の屋根を付けられないだろうか。待たされるのはいつでも苦痛だ。それとセンターコートやナンバー1コートの試合開始時間も(日本時間)午後9時から7時に早めて欲しい。そのせいで毎日寝不足なのは健康上非常に良くない。全仏も6時からなのだから検討ぐらいはして貰えないだろうか。
それと懐かしいゲストがたくさん来ていたが、皆優勝した人ばかりでそうでない人は呼ばれないようだ。やっぱり優遇されるのは勝者だけ、なのはハッキリしている。
さてフェデラーとマレーのどちらか、と言われればフェデラー優位は動かない。場数(優勝経験)の差があるからで、マレーが勝つには最初の2セットを取るしかない。あるいは、5セットまでなんとか持っていきスタミナ勝負にする手もあるが、フェデラーのサーブの出来がいいとそれも難しい。一方、フェデラーがやるべきことは3つだけだ。サーブを入れること、力まないでプレーすること、試合を長びかせず4セットまでに終えることである。
(決勝がいつも名勝負になるとは限らないが)地元のマレーが自身初のメジャータイトルを獲る瞬間に、センターコートは一体どうなるのだろうか。それともフェデラーの(ひさびさの)うれし泣きが見られるのか、どちらのエンディングでも興味津々ではある。しかもそれがライブで見られるのだから、テニスファンにとって至福の時なのは間違いない。
2012年07月03日
夢の途中
「あっざりーん。」「はーい。ウインブルドンクオーターファイナルはっじまるよー。」唐突だが「ゆるゆり」というテレビ東京でやっている人気アニメの第2期が放送開始したので、それのプロローグ風に始めてみた。(決して、アザレンカの存在感が薄いわけではない。)いよいよウインブルドンも男女共にあと7試合づつになった。ここまで来れば優勝したいのはだれもが同じだが、メジャータイトルというのは(大抵は)優勝経験者に転がりやすい。ウインブルドンも例外ではなく、ナブラチロワやグラフ、サンプラスといった、誰もが認める大本命が獲得するのが通例だ。その一方で決勝まで進みながら、1度もタイトルに手が届かなかったレンドルやセレシュ、エナンなどの名選手もいるのが不思議なくらいだ。クライチェクやマルチネスなどのそれが最初で最後の場合もあるにはあるが、レアケースといっていい。だが、決勝の常連が(予定調和に)勝っても個人的にはちっとも面白くない。ここは初優勝がかかる選手を押したくなる。セリーナとクビトバは除くと、残りはアザレンカ、ラドバンスカ、カーバー、レシツキ、キリレンコのシード順になるが、やはりイチオシはノーシードのパスゼックだ。ウォズニアッキにアップセットしたのは単なるまぐれではない。彼女の勝負強さは本物だ。昨年もベスト8には入っているので相性はいいのだろう。ただ、ここからが勝負所だ。どんなに実力があってもタイトルを取らないと本当の意味で評価されないのがこの世界の常識なので、今回のチャンスを十分に生かしてほしい。勿論アザレンカを倒すのはとても大変なのだが、やって出来ない事はない。アンダードッグにはアンダードッグなりの戦い方があるはずだ。パスゼックの最大の武器である、テクニックを超えるメンタルの強靭さが「2度目のアップセット」にも必要だ。
「実力のあるいい選手」でキャリアを終えるのも悪くはないだろうが、1つくらいはメジャータイトルがあったほうがいいに決まっている。4度目の正直でワイルドカードから優勝したイバニセビッチや、最初の決勝から5年かかって夢を叶えたノボトナのように、歴史に自分の名を刻むのもいいものだ。ひさびさの「ノーシードからの優勝」をライブで見てみたい。度胸と愛嬌を兼ね備えたパスゼックに、気まぐれなウインブルドンの女神は微笑むのだろうか。