2012年07月09日
運命のいたずら
ウインブルドンが終わった。シングルスの女子はセリーナ、男子はフェデラーという大本命が優勝するいつもらしい幕切れだった。ラドバンスカもマレーもこの恐るべき優勝常連者たちにアップセットすべく頑張ったのだが、そうはならなかった。勝負強いシャラポワやクビトバのように最初の決勝でタイトルを獲れる場合もあるが、大抵は時間がかかるのが普通だ。93年の決勝でグラフに負けたノボトナが実際にタイトルを獲得したのは5年後の98年だし、92年にアガシに敗れたイバニセビッチがワイルドカードをもらって(通算4回目の決勝で)やっと優勝したのは9年後の01年である。いかにここで勝つのが大変かが伺えるエピソードだろう。だからマレーもラドバンスカも諦めないで欲しい。今回決勝まで進出したのは(決してまぐれなどではなく)優勝するチャンスが十分にあるという事だ。まあ、現在トップ5にいる2人がこれが最初で最後の決勝、などとは全く思っていないだろう。(特に)近い将来マレーには「この敗戦があったから優勝できた。」とインタビューに答えて貰いたい。きっと違う意味の涙が出るはずだ。
ただ、(マレーのファンには悪いが)決勝の相手がマレーになった時フェデラーは(内心で)優勝を確信したに違いない。3年前とほぼ同じシチュエーションだったからだ。あの時も苦手のナダルは欠場し、決勝で相性のいいロディックに5セットまで追い詰められはしたが、結局優勝できた。そして今年も。あのマリッセ戦での腰痛というアクシデントがあったせいで、フェデラーが(多分、試合を長びかせたくない一心で)自分の1番いいプレイを引き出したのはなんとアイロニー(皮肉)で運命的な出来事ではないか。そう、(まるで神風の様に)こんな絶好のタイミングで再度追い風が吹いたのだ。その勢いのままナンバー1のジョコビッチを破り、優勝にまでたどり着いた。この一連のプロセスを見る限り、やはり彼がナンバー1にふさわしいのかも知れない。それは、今回でサンプラスの優勝記録に並んだフェデラー自身はもちろん、きっと全世界のテニスファンとテニス界全体にとっても幸せな事なのだろう。
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