2012年11月19日
100回目での奇跡
チェコがデ杯で初優勝した。ナダルがいないとはいえ、強豪スペイン相手にプレッシャーが重くのしかかるホームで勝ったのだから大したものだ。特筆すべきは、やはりステパネクの頑張りだろう。シングルスは決して上手くも、勝負強くもない彼が、ランキングでは格上のアルマグロに(時間はだいぶかかったが)辛抱強く戦い、最後には歴史的な勝利をチェコにもたらした。まさにデ杯らしいドラマチックな幕切れだったが、正直予想もしない結果に驚いた。おそらくプレイしていたステパネク自身と、それを応援していたチェコチームのメンバーぐらいしか今回の勝利を信じていなかったのではないだろうか。対戦していたスペインチームはもちろん、O2アリーナに駆けつけた満員の観客も、テレビ観戦していた億単位のテニスファンも多分スペインが勝つだろう、ぐらいの前提で試合を見ていただろう。だが、現実はそうならなかった。何度もブレイクチャンスを迎えながら、なかなか取りきれないステパネクのプレイにじれったさを感じながらも、少しずつ勝利という名のゴールに近づこうと奮闘するプロセスは、テニス特有の面白さとスリルに満ち溢れた濃厚な時間だった。これまでダブルスのプレイヤーとしてしか評価されなかったステパネクの最も輝ける瞬間とも言えるだろう。
今年最後の試合でこんなハッピーエンドになるなんて、テニスの神様の粋な計らいとしか思えない。ビバ、テニス!これだからテニスファンは止められないと、また改めて実感させられた。